大別すると下記の3点があります。
温度センサは基本的に測定物から熱をもらい感温部を測定物と同じ温度にして、感温部の温度を表示するので、あまり熱容量が小さいものを測ると、測るという行為自体が誤差要因になってしまう場合があります。
例えば、同じ温度の測定物(大)、測定物(中)、測定物(小)があったとします。
それぞれに同じ大きさ(熱容量)のセンサを当てて温度を測定すると様子がそれぞれ異なります。
上図を見て下さい。左が大きい測定物を測った場合、真ん中が中位の測定物を測った場合、右が小さい測定物を測った場合です。
小さい測定物を測った時は、大、中くらいの測定物に比べ、センサを当てる事により圧倒的に測定物の熱を冷ましてしまいます。最終的にセンサは何の温度を測るかというと、その冷めた測定物の温度を測りますので、何を測りたかったのか分からないような状況になってしまいます。
「ではどんな測定物の時でも小さい(熱容量)センサで測れば良いじゃないか!」という事になるのですが、小さいセンサですと頑丈さが足りなかったり、ちょっと傾けて当てただけで密着性が悪くなり温度が低く表示されてしまったりしますので注意が必要です。
ただ、一般的なサイズの金属を測っている場合はこういった問題は起きづらく、例えば半導体の素子などの小さいもの。また樹脂で出来た物を測る場合にはこれらの注意が必要となります。
物質には熱伝導率があります。簡単に言いますと物質内での熱の伝わりやすさです。
常温付近での熱伝導率(W/m*K) (参考値)
物質 | 熱伝導率 | 物質 | 熱伝導率 | |
銅 | 390 | ガラス | 1 | |
アルミ | 210 | テフロン | 0.25 | |
SUS304 | 16 | 空気(未対流) | 0.02 |
いくつか代表的な物質の熱伝導率を記載しました。
傾向として金属系は高く、樹脂系は低くなります。電気伝導率が高いものほど熱伝導率も高い傾向にあります。
この熱伝導率、温度を測定する際になかなか厄介となる場合があります。
下図は、例えば測定物がアルミ(熱伝導率210)の場合とテフロン(熱伝導率0.25)の場合、これらを表面温度計で測定した時の温度分布のイメージ図です。
上段がアルミ、下段がテフロン。となっています。
アルミの場合、センサを当てる事により瞬間的に物体内の温度ムラが起きますが、熱伝導率が良い為、すぐに全体の温度がなじんで安定します。
テフロンの場合、熱伝導率が悪いですので、全体の温度がなじむ速度が非常に遅いです。最終的に、温度分布があるまま飽和状態になります。センサから放熱していくスピードが、テフロンの熱移動速度よりも大きい為にこれが起きます。
(※アルミにも同様の放熱が起きているのですが、熱伝導率が高いので安定します。)
これらより、テフロンなど熱伝導率が悪いものは、体積が大きくても測定に注意が必要です。
この対策としては、測定物に影響を与え辛い熱容量の小さいセンサ(小型のものや、樹脂製ガードのセンサ)を使う。もしくはこの現象はある程度再現しますので、あらかじめセンサがどの程度低く温度を測定するか調べておき、補正をかけて使用するなどの対策が考えられます。
温度計は「熱接点部(感温部)を測定物に触れさせて測定物から熱をもらい、熱接点部(感温部)の温度を測定物の温度と同じにして熱接点(感温部)の温度を測る。」という特性があるので、感温部と測定物の密着度が重要となります。
密着度を阻害する主な要因として、「センサを傾けて測定」「測定物表面のごみや付着物」「センサ感温部の変形破損」等があります。これらは測定精度だけでなく、センサの耐久性にも悪影響を与えます。
・熱容量の小さいものを大きいセンサで測ろうとしてないか?
・測定物表面にごみなどが付着していないか?
・センサの感温部が変形していないか?